はじめに
最近、僕の周囲では自作シナリオを作ろうという機運が高まっています。
それはとてもよいことで、僕はとても嬉しくたまらないですし、どんなシナリオができるのかとワクワクしています。
ですが、同時に「どうシナリオを作ればいいのか分からない」といった声もちらほら聞こえくるのも事実です。
オフィシャルシナリオなど手本となるものはたくさんありますが、しかし遊んでいないシナリオを読むのは勇気が要ります
またシナリオを読んでいきなり売り物ほどのシナリオを書けるかというとなかなか難しいのも事実です。
そこで、まだまだ拙い恥ずかしいものではありますが、僕のシナリオ作成テクニックを紹介することで皆さんのシナリオ作成の一助となればと思いコラムを用意しました。
少しでも、お役に立てたならば幸いです。
なお、百聞は一見にしかずということで実際に僕がシナリオを作りながら、手順どおりに説明しています。
その際、例として使っている「Friend of Ghost」は数年前に作成したシナリオ「Cycrops Rhapsody」を現在の僕の手法でリメイクしているものです。
完全新作ではありませんし、また説明に重きを置いているので普段よりも軽めで癖のないシナリオを意識しております。そのため、少し物足りない部分もあるかもしれませんが教材用と割り切っていただければ幸いです。
また勿論ですが同シナリオの壮絶なネタバレを含んでいますので、ご了承ください。
今回のコラムについて
シナリオの作り方を一気に全部を掲載すると膨大な量になってしまうため、数回に分けて掲載する予定です。
第一回の今回はシナリオの基本的なイメージを決め、それを膨らませるイメージングの作業について述べていこうと思います。
イメージを決める
まず最初に決めるべきはどんなシナリオを作ろうかというイメージです。
では、具体的に僕がどんな風にイメージを決めているかを例に挙げてみましょう。
このシナリオはリクエストを受けて作成するシナリオでした。
指定はPC@がニューロのシナリオでした。
そのリクエスト者のニューロの設定は以下の通り。
url:http://star.ap.teacup.com/kt-world/3.html
設定を見る限り、種族などを超えた絆のお話がこのキャストには似合うと僕は考えました。
ニューロが主人公で種族など超えた絆のお話となれば、AIを題材にした話が定番です。
そんなわけでこのシナリオはAIとニューロの友情話、ということを基本イメージにしましょう。
このイメージというのは決まった形はないので好きに決めていただければいいと思います。恥ずかしながら、僕が他に作ったシナリオを例に挙げるとこんな感じになります。
例)「パトレイバーみたいな話(元ネタ再現型)」「トーキーが心の温かくなる話を取材する話(テーマ型)」「記憶喪失で名前を持たない女の子に名前をつけてあげるシーンがやりたい(シーン型)」etc
イメージを膨らませる
とはいえここまではまだあくまで基本イメージ。これだけではシナリオの下敷き程度しかありません。
ここからシナリオのイメージを膨らませてみましょう。
僕が良く使う手法は、単語を抜き出してそれを繋いでいくことです。
この際、キャストがどう関わるのかを確認するためにもキャストの枠についても併記します。
以下に僕が実際に使っているメモを提示します。
手書きなので少し読みにくいかもしれませんが、そこはご容赦を。
まず最初に書き込んだのは『ニューロ』−「友情」−「AI」の三つです。
これは「AIとニューロの友情話」という基本テーマを分解して表示したものです。
また『ニューロ』と「AI」を四角で囲んでいますが、これはキャストかゲスト(エキストラ含む)であることを示しています。
キャストやゲストは、以降の作業で確認が必要になるのでこのように一目で分かるようにしておくとよいと思います。
では、作業を続けましょう
次に友情を中心にすえるならば、「友情」に対応するシナリオの障害を設定するべきです。
僕は友情に対応するのは「利用」と考えました。AIを利用しようとする「敵」がいるということです。
この「敵」に関してはまた後にキャラ付けすることにして先に進めましょう。
次にAIをどんな風に利用すると許せないと思ってもらえるかを考え、「兵器利用」に思い当たります。
AIを兵器利用しようとするならば、敵は「企業」に所属していると考えるのが自然でしょう。
ではどこの企業がいいかと考えた結果、ここは電脳に強くてまた流行りものということで「テラウェア」と考えました。
企業化が関係する以上、『クグツ』を絡めるのがよいでしょうから、それを追加します。
最後に、『クグツ』を唯の仕事導入で終わらせるよりはライバル導入の方が映えますので、ここで『クグツ』と敵を「因縁」で結びます
さて、これで敵に関しては大体のイメージの掘り下げは完了しました。
では、次は今回のヒロインともいえるAIについて考えましょう。
まず兵器として利用されるくらいですから、おそらく性能の高い「超AI」なのでしょう。
超AIといえばアルファ=オメガを始めとしたオメガシリーズですが、大半が既に設定されておりこれからも設定されていくかと思うと少し使いにくいのも事実です。
よって、ここではそれ以外の超AIで考えてみました。
少し昔の設定になってしまったマニアックなのですが、僕は「ソロモンシリーズ」を思い出しました。
ソロモンシリーズとはヴィル・ヌーヴの大企業、トロン・ド・ルテチアが所有する72機の超AIのことです。
このソロモンシリーズはこれまでのシナリオを見ると、高性能ながら通常では自我に芽生えていないような雰囲気があります。
自我を持たなかったAIが、『ニューロ』との交流で自我を芽生えさせるというのは非常にシナリオ的にマッチします。
そこで、今回のキーパーソンとなるAIはソロモンシリーズの一機ということにします。
ソロモンシリーズといえばルテチアですが、ここで僕はDになってルテチアからテラウェアへと移籍した「アスタロテ」の存在を思い出しました。
D以降ではほぼ登場しない彼女ですが、昔はキャストサイドの依頼人としてよく出てきたゲストです。
Dになってからのアスタロテには少し触れてみたい部分もあったので、今回も彼女を通じて『キャストA』に依頼を出すことにしましょう。
またソロモンシリーズは計画支援用AIとして開発されたため、ルテチアの特殊環境委員であったアスタロテも所持していました。
そのため今回のキーパーソンであるAIは彼女の所持していたソロモンシリーズの一機にしましょう。
彼女が所持していたソロモンシリーズは“バール”“フォルネウスス”“マルコシウス”の三機。
それぞれ命名元の悪魔を調べてみると“術者に敵味方問わず人望をもたらす”「フォルネウス」が適当と判断しました。
これで簡単なシナリオ背景についてはまとまりました。
ここで終わらせてもいいのですが、現状関係するキャストが3キャストなので、もう少し掘り下げることにしてみました。
これに追加で関わる要素としては、兵器利用された結果何らかの事件や事故が起こってそれにキャストを対応させるのが良いでしょう。
そこで、フォルネウスについて少し着目してみました。
このフォルネウス。実は海魔であり、要するに陸の上に上がることができない悪魔なのです。
これを電脳にたとえれば、電脳の海から出ることのできない。すなわち物理世界には影響を及ぼせない電脳世界でしか生きられない存在とも読み解けます。
これにより「物質世界に憧れと好奇心を持っている」という、AIの願いを考えることができます。
更に発展させて「体が欲しい」AIと、その願いを利用しようとする企業と言う構図が見えてきます。
ここで、先ほどの兵器利用に立ち返りましょう。
体が欲しいAIと、兵器。これを組み合わせたら戦闘を目的とした「戦闘ドロイド」を「肉体」にさせられてしまったという図式を考えることができます。
この戦闘ドロイドとフォルネウスをどのように扱うかはまだ未定ですが、一応個々では立場のことも考えて別のゲストとして考えてみましょう。
この戦闘ドロイドですが、できればかなり初期の段階でPL達に顔見せをさせたいところです。
そして考えたのが「脱走と暴走」です。
この事件に『キャストB』を対応させることにします。
このようにして『ニューロ』−「友情」−「AI」の3つから始まった基本イメージが、総計21個にまで膨らませることができました。
また、図示することでシナリオの骨子について視覚的に捕らえるように出来るようにもなりました。
文章にしてみるとかなり大掛かりなことにみえるかもしれませんが、誰でも脳内でやっていることをただ書き出しているだけです。
こうして形にして書き出してみると頭の中が整理されてやりやすいと思います。
それも全てを解説しているため長くなっていますが、作業としては僕はメモを書き足して済ませるのでメモひとつ書くだけなので慣れてしまえばそれほどの手間でもないと思います。
是非、お試しいただきたいと思います。
次回予告
次回は今回膨らませたイメージを元に、シナリオに登場するキャラクター。つまり、キャストとゲストのキャラクターの肉付けについて紹介します